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気になる症状 すっきり診断

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気になる症状 すっきり診断 2023.03.15

身近にある貧血

血液内科 科長|張替秀郎

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 皆さんの血が赤いのは、血液のおよそ半分を赤血球という細胞が占めているからです。具体的には、血液1ミリリットルにつき赤血球は50億個が含まれており、血液全体となるとその数は総計20兆個にもなります。人体で最多の細胞です。この赤血球は酸素を運ぶ細胞で、その中にはヘモグロビンという物質が大量に含まれており、ヘモグロビンの中にある鉄が酸素と結合することにより、赤血球は酸素を体の隅々まで運んでいます。

 このヘモグロビン量が低下して、酸素をうまく供給できなくなる状態が貧血です。ヘモグロビン量は赤血球の数とほぼ同じように上下しますが、貧血の診断の際にはヘモグロビン量を目安にすることが一般的です。検診結果にはヘモグロビンの数値が必ずついてきますので、見てみてください。男性ですと13g/dl未満、女性では12g/dl未満を貧血と診断します。貧血になると組織が低酸素になり、だるさ、めまい、息切れ、動悸(どうき)などの症状が出てきます。ただ、その方の年齢や体力によりこれらの症状の程度は違ってきますので、ヘモグロビンの数値が基準値以下になったからすぐに貧血の症状が出るとは限りません。
 貧血の原因は多数あるのですが、最も頻度が高いのは鉄不足による鉄欠乏性貧血です。鉄不足によりヘモグロビンが作れなくなり、貧血になるわけです。日本では月経がある女性の10~20%がこの鉄欠乏性貧血であるといわれており、人数でいうと200万~400万人にもなります。また、鉄はヘモグロビンだけでなく全ての細胞にとって必要な微量元素なので、鉄が不足すると舌の荒れや爪の変形など貧血以外の症状も出てきます。理解力の低下や作業効率の低下の原因にもなるといわれています。

 鉄不足の原因は、(1)成長や妊娠により必要量が増える(2)不十分な食事で摂取量が不足する(3)体から失われる、のいずれかです。月経のある女性では定期的な出血により鉄が失われるので、前述のように高率で鉄欠乏性貧血がみられます。ですので、この年代の女性は意識的に鉄を取らなければいけません。
 鉄は肉にも緑色野菜にも含まれていますが、肉に含まれている鉄の方が吸収が良いことが知られています。ただ、毎日肉だけ食べていると他の栄養素の摂取が偏ってしまうため、鉄を含んだ食材をバランスよく取る必要があります。ビタミンCは鉄の吸収を促進するので、積極的に取るとよいかもしれません。注意しなければいけないことは、胃がんや大腸がんでは、がんの部位から出血するため、鉄不足となることです。ですので、月経のない成人男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血が認められた場合は要注意で、内視鏡などの検査を受けることが必要です。

河北新報掲載:2019年2月1日
一部改訂:2023年3月15日

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張替 秀郎(はりがえ ひでお)

茨城県出身。1986年東北大学医学部卒業。東北大学医学部第二内科、米国ロックフェラー大学研究員などを経て、2007年に東北大学大学院医学系研究科血液免疫病学分野教授に就任。2012年より東北大学病院 副病院長。専門は血液内科学。

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